肥満はなぜこわいのか
動脈硬化性疾患や糖尿病のほか多種の会併症に直結
肥満症のこわいところは、合併症が非常に多岐にわたり、それによる健康障害を起こすということです。
とくに肥満に伴う高血圧、高脂血症、高インスリン血症などから発症してくる冠動脈疾患、脳血管障害などの動脈硬化性疾患は、日本人の死因の約四割を占めており、肥満が苦痛を伴わないからといって、軽く考えないようにしていただきたいのです。
肥満の程度と、その程度の上昇と合併症の増加については、アメリカや日本でも調査されています。
日本では肥満度プラス三十%を境として高血圧、糖尿病、脳卒中、心筋梗塞が増加するとの報告があります。
とくに糖尿病は、肥満度プラス二十五%で正常者の平均三〜四倍、プラス三十五%以上では五倍以上との報告もあります。
肥満に伴うおもな疾患
糖尿病
肥満というだけで発症するとはいえませんが、糖尿病を発症する前の最高体重でいうと、平均肥満度プラス二十八・八%、女性ではプラス三十・九%との報告もあります。
BMIでいうと二十六以上の人が五十歳代を中心に高率に認められ、糖尿病の家族歴のある人では、三十歳代がもっとも高率だといわれています。
また、肥満とインスリン非依存型糖尿病との関係については、まだ不明なことも多いのですが、肥満者の死因でみると糖尿病がもっとも死亡率が高く、正常者の約四倍になっていることからも、いかに肥満に対し、予防と治療がたいせつかがわかると思います。
高脂血症
冠動脈疾患の発症には、高脂血症、肥満、インスリン抵抗性、高血圧などが関与し、体重と心血管疾患による死亡率は、正の相関を示すといわれていましたが、最近ではむしろ肥満度よりも、脂肪の体内分布状態が、より合併症の発症に関係が深いことがわかってきています。
高脂血症は血清脂質のうち、とくに総コレステロールと中性脂肪が増加したもので、これに加えてHDLコレステロールの低下したものは、動脈硬化症を増悪させるといわれており、この状態はとくに、成人肥満者で顕著です。
脂質からみる動脈硬化指数は成人、小児を問わず、いずれの肥満でも肥満度の増加とともに増大することからも、脂質代謝を改善させることによって、動脈硬化を防がなくてはなりません。
高尿酸血症
この頻度は中高年になるほど増加し、血清尿酸値はBMIと相関するといわれています。
とくに肥満者では正常者群に比べ、BMI二十六・五以上のものでは有意な上昇が認められています。
高尿酸血症は、冠動脈疾患の危険因子としても重要であり、また痛風の発症にもつながり、これらのことからも改善治療がたいせつです。
肥満度が増大すると脳卒中頻度も増加
高血圧、心疾患、脳血管障害
高血圧症患者に肥満者が多く、また肥満者が高血圧症を合併しやすいことは、よく知られています。
肥満者では正常者に比べ、高血圧の頻度は二〜三倍あるといわれています。
肥満者が高血圧を発症するしくみは、必ずしも明らかではありませんが、肥満者が減量するだけで、血圧が下降することも知られており、肥満と高血圧の間には、深い関係があると考えられています。
このほか狭心症、心筋梗塞、心不全などの心臓病も伴いやすく、肥満そのもののほかに、肥満者では高血圧、糖・脂質・尿酸代謝異常などの動脈硬化の危険因子を伴うため、心疾患を悪化させる可能性が増大します。
脳血管障害については、民族や地域差もあり、障害血管の部位によっても、危険因子の関連性が異なるなどの点から、一定の見解は得られていませんが、脳動脈硬化、脳梗塞の合併頻度は、非肥満群に比べて肥満群が高いという報告があります。
肥満度が増大するにしたがって脳卒中の発症頻度は増加しており、とくに若年者ほどその傾向が強いこともわかっています。
呼吸器疾患
肥満によって諸臓器やその周辺組織への脂肪沈着が増大しますが、そのひとつとして呼吸運動障害が生じます。
体重増加によって代謝が元進し、酸素の消費量や炭酸ガスの産生量が増加する一方で、肥満によって呼吸筋の動きが低下しているため、ガス交換障害が生じ、動怪、息切れが生じるのです。
このほか、肥満によって、上気道径が相対的に縮小するため、睡眠時無呼吸症候群、とくにそのなかでも閉塞型(OSA)が合併しやすくなります。
この一部の患者では、覚醒時の動脈血中の炭酸ガス分庄が上昇します。
この状態の重症化したものがピックウィック症候群と呼ばれるものです。
OSAでは、上気道抵抗の増大に加えて、上気道径の相対的縮小を伴うため、上気道抵抗はさらに上昇し、この結果閉塞型無呼吸をくり返します。
この無呼吸に伴う低酸素血症と、無呼吸終了時に出現する脳波上の覚醒が、昼時間の傾眠、覚醒時の頭痛、精神障害、高血圧の原因と考えられています。
OSAの基本的な治療は減量ですが、減量が困難な場合は、経鼻持続陽庄呼吸療法が、第一選択の治療法となります。
脂肪肝や胆石骨、関節にも異常
このほか、肥満、栄養過剰からインスリンの過剰分泌をきたし、肝臓での脂肪合成が亢進して脂肪肝を生じさせます。
胆石症は最近増加傾向にありますが、コレステロールを主成分とした結石は、コレステロール過飽和状態の胆汁から産生され、胆のう内結石の原因となります。
肥満は、骨、関節にも異常を生じさせます。脂肪組織が過剰となり、骨、関節組織に負担をかけるためです。
その代表的な疾患は、変形性膝関節症と呼ばれるものです。
この疾患は、男性に比べて女性が約三倍も多いのは、女性のはうが骨格が細く、筋力が弱いために、関節そのものに大きな負担がかかってくるためだといわれています。
女性の肥満傾向で子宮がん、乳がんも
がんは栄養過多になると発症してくることが、マウスや牛などの動物実験で認められています。
人でも栄養過多や肥満者で乳がん、子宮体がん、卵巣がん、前立腺がんなどの梶患率が高くなっています。
アメリカの統計でも、子宮体がんの発生が体重と密接に関連があるといわれており、そのほかにも胆のうがん、胆管がん、子宮頚がん、腎臓がんでも関連性が認められています。
最近、日本の女性でも、以前は欧米に比べて低率であった子宮体がん、乳がんなどが増加していますが、これは日本女性の肥満傾向とも関連があるのではないでしょうか。
大腸がんの発生率と肥満度との相関は、欧米に比べて以前は少なかったのですが、この増加も食生活の変化とともに、運動不足、肥満の増加が関与していると考えられています。-----
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