心筋梗塞の治療
安静で楽な姿勢に
発作が起きたら、まず安静にして楽な姿勢をとります。
安静にしても発作がおさまらないときは、発作を止める特効薬である亜硝酸剤(ニトログリセリンや二トロールなど)が用いられます。
速効性の亜硝酸剤は、舌の下に入れて溶かしますが、最近ではスプレーもあります。
亜硝酸剤によって、冠動脈と全身の血管が拡張し、心筋への血流が増えると同時に、心臓に戻る血液の日亘を減らし、心臓の負担を軽くして発作を止めます。
非発作時の治療は、薬物療法が主体となります。
通常は長時間効果のある徐放性の亜硝酸剤(内服薬や貼付剤)や、降圧剤としても汎用されている血管拡張剤であるカルシウム括抗薬、心臓の働きを抑えて心筋の酸素消費量を減らすベータ遮断薬、冠動脈内血栓を予防する抗血小板薬などが用いられます。
PTCA(経度的冠動脈形成術)
先端にバルーン(風船)のついたカテーテルを、冠動脈造影検査と同じ方法で動脈内に挿入し、しぼんだバルーンを冠動脈の狭窄した部分に通し、加圧してバルーンをふくらませて、狭窄部を押し広げる治療法です。
この治療法は、バイパス手術に比べて患者さんのからだにかかる負担がはるかに軽く、高齢者や手術に耐えられないような、全身状態のわるいケースでも適応することができます、入院期間も非常に短くてすむため、最近急速に普及してきています。
PTCAの成功率は高いのですが、治療後三か月以内に再狭窄を起こす率が三十〜四十%あるため、外来での経過観察がたいせつです。
再狭窄を起こした場合には、再度PTCAを施行すると、再狭窄は起こりにくくなります。
最近では、PTCAと同時に、カテーテルを用いてステント(金属のコイル)を冠動脈狭窄部に挿入し、留置する方法も行われるようになり、再狭窄率の低下に役立っています。
大動脈冠動脈バイパス手術
冠動脈の一枝だけでなく、二〜三枝の重要な枝に狭窄があるような場合、PTCAが適応とならない症例では、手術によって冠動脈の血流改善をはかるのが確実です。
胸壁の内側を縦に走っている内胸動脈、あるいは大腿部の内側を走っている大伏在静脈の一部分を切り取り、それらを用いて、大動脈と冠動脈の狭窄部末梢側をつなぎ、血行再建を行う手術です。
直後死が多いから至急病院に収容
心筋梗塞は発症直後の早期死亡が多いので、できる限り早急に病院に収容しなければなりません。
心臓が停止した場合は、心臓マッサージと人工呼吸をただちに開始しなければなりません。
死亡の約半数は、発症後十二時間以内に起こります。
外来での治療
心筋梗塞の治療は、冠動脈内血栓の生成と拡大の予防、冠動脈の血流改善などを目標に行われます。
発作の直後は絶対安静にし、酸素吸入を開始します。
診断のため、心電図の記録と採血をし、薬物投与のために血管を留置針で確保します。
激しい胸痛に対しては、鎮痛剤のモルヒネを、心電図で心室性不整脈が認められれば、抗不整脈薬を静注します。
そして、冠動脈を拡張させる亜硝酸剤、冠動脈内の血栓形成の進展を防ぐ抗凝固薬の点滴を開始します。
入院後の治療
入院後は、梗塞の拡大、不整脈、心不全やショックの監視と治療が中心となります。
心筋梗塞を発症して六時間以内であれば、血栓溶解薬を静注し、冠動脈内血栓を溶かして血流を再開させることも可能です。
この治療は、時間がたって梗塞が完成してからでは効果が期待できません。
冠動脈検査が早急に施行できる場合、冠動脈の閉塞を確認したのち、閉塞部に直接PTCAを行う施設も増えてきています。
また、冠動脈の入口に引っかけたカテーテルから、直接血栓溶解薬を注入する冠動脈内血栓溶解療法(ICT)が行われることもあります。
心不全を合併している場合は、特殊なスワンガンツカテーテルを用いる場合があります。
これは、カテーテルを大静脈に挿入し、心臓を経て肺動脈に留置するもので、肺動脈圧や心臓からの血液抽出量を頻回に測定して、肺うっ血や心不全の程度を正確に把握し、それらの測定値を参考として利尿剤、強心剤、血管拡張薬などを投与します。
心原性ショックに対しては、大動脈バルーンパンビング法を用いる場合もあります。
これは、先端に大きなバルーン(風船)のついた太いカテーテルを大腿動脈に挿入し、胸部大動脈に留置します。
心臓の拡張期(心室が拡張するとき)に、バルーンをふくらませて冠動脈血流を増加させ、収縮期(心室が収縮するとき)にしぼませて、心臓の機能を補助する方法です。
不整脈の房室ブロックに対しては、人工ペーシング法があります。
これは、電極カテーテルを大静脈を経て心臓(右心室心尖部)に挿入して、体外から電気的刺激を心筋に与えて心臓を動かす方法です。
心臓リハビリ
合併症もなく、順調に回復すれば、発作後五〜八日ほどで、症状も安定します。
安静度をじょじょに軽減し、少しずつ運動量を増やしていきます。
薬も点滴や注射から内服薬に変更されていきます。
食事も発症後一〜三日は絶食としますが、流動食から、少しずつ普通食に戻していきます。
食事内容は、動物性脂肪を少なくし、カロリーは一日二千キロカロリー以下、塩分は七グラム程度とします。
八日目あたりから歩行を許可し、自覚症状、血圧変動や心電図変化のないことを毎回たしかめながら、運動量を増やしていきます。
経過が順調であれば、三〜四週間で退院となります。
家庭では、日常生活に慣れたら、まず散歩を始めます。散歩の距離を少しずつ伸ばしていきます。
この時点で異常がなければ、職場復帰となります。
最初は半日程度の短縮勤務から始め、勤務時間をじょじょに延ばして、通常の勤務に戻していきます。
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