胃がんの治療
どれだけ深いかで治療方法は異なる
胃がんの治療は、がんの進行具合によって治療方法も異なってきます。
それは前にも述べたように、がんの大きさというより、がんがどの深さまで進行しているかによって決まります。
がんの治療方法を決めるうえでもっともたいせつなことは、胃の周囲のリンパ腺に転移の可能性があるかどうかによります。
リンパ腺という組織は、胃のまわりを取り囲んでいて、ウイルス、細菌、がん細胞などの外敵と戦うリンパ球という細胞が集まっています。
がんが胃から出て転移を始めると、まずこのリンパ球と戦うことになります。このリンパ腺に転移がある場合、せっかく手術で胃を切除しても、リンパ腺にがんが取り残されることになります。
がんが粘膜内にとどまっている場合は、リンパ腺への転移はほとんどありません。ですから、病変が小さい場合は、胃カメラを使って切除することも可能です。
また、胃を切除する場合でも、小範囲の切除で十分なのです。
粘膜のすぐ下の組織は粘膜下層と呼ばれています。この層にはリンパ管や血管がかなり多く分布しており、粘膜と違って、この層までがんが進行してくると、リンパ腺に転移する確率は約10%となります。
リンパ腺は、がんのすぐ近くを取り囲む一群リンパ腺、そのさらにまわりを取り囲む二群リンパ腺、さらにその外側を取り囲む三群リンパ腺に分けられています。
粘膜下層までのがんの一群リンパ腺への転移の可能性は、約十%ですから、その周囲のリンパ腺、つまり二群のリンパ腺まで切除することによって、ほぼ完全にがん組織を切除できたといえるのです。
したがって、粘膜下層までのがんは、胃を切除するだけでなく、この二群のリンパ腺まで切除しなければなりません。これによって約九十八%の人の胃がんが治っています。胃の切除範囲も、約三分の二程度の切除で十分でしょう。
粘膜下層より深い部位まで進行したがん
早期胃がんと比較して、進行胃がんと呼ばれます。
この部位まで進行すると、がんのリンパ腺転移の確率は二十%から六十%と急激に上昇します。
リンパ腺も、二群よりもさらに遠い三群のリンパ腺まで切除しなければならないように、理論上は考えられるのですが、実際はそれ以上行っても、あまり生存率に差はないのです。
むしろ手術の影響で、下痢や腹痛、腰痛などの後遺症が残って、日常生活に影響を及ぼす場合が多いのです。
最近では二群のリンパ腺の切除にとどめ、そのリンパ腺の転移の状態で、そのほかの治療法を考えるという傾向にあります。
進行がん患者の五年生存率(五年間生きられる確率)は、四十%から五十%で、三群のリンパ腺にまで転移していると、ほとんど0%に近い数字となっています。
そのほかに抗がん剤による治療や、免疫療法などの治療法がありますが、決定的なものはありません。いかに早期治療がだいじかがおわかりになると思います。
また、進行がんになると、がん自体の大きさも増してきており、手術で胃を全部切除する場合が多くなります。
胃を残す場合と全部取る場合とでは、手術後の食生活や栄養状態にかなり差が出てきますので、貴近では、腸で胃の代わりになるような代用胃をつくって、消化吸収を助けるくふうがいろいろと研究されています。
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