成人病の怖さ
がん、心筋梗塞、脳卒中といえば、だれにでもこわい病気というイメージがあります。
ところが、糖尿病、高血圧症、高脂血症などは「それほどこわくない」と思いがちです。
そのため糖尿病の食事療法をおろそかにしたり、高い血圧をほおっておいたり、健康診断で血中コレステロールが高いと指摘されたのに、なんの対策も講じない人が少なくありません。
糖尿病の恐ろしさは、その合併症にあります。
糖尿病をほおっておいて、血糖の高値が長く続くと、小血管や神経が侵されてきます。
現在、網膜の血管が侵される糖尿病性網膜症は成人の失明原因の第一位となっており、また腎臓糸球体の血管が侵されて尿がつくれなくなる糖尿病性腎症も急増し、腎炎を除く透析療法の原因疾患の第一位となっています。
また、下肢の神経が侵されて壊痕を起こし、下肢を切断せざるを得ないケースも増えています。
さらに糖尿病は、動脈硬化の重要な危険因子です。
動脈硬化にはいろいろなタイプがありますが、一般に動脈硬化といえばアテローム硬化(粥状硬化)を指します。
これはおおよそつぎのようなプロセスで形成されると考えられています。
�@血管は三層構造で、内膜はすべすべしているが、その内膜に小さなキズがつく。
これには、高血圧による強い血流、過酸化脂質やたばこのニコチン、あるいはアドレナリンの過剰分泌による刺激などが原因と考えられる。
�A血液中のコレステロールなどがそのキズの部分に付着し、内膜と中膜の間にたまっていく(これをアテローム形成という)。
血圧が高いうえ、血液中のコレステロール、中性脂肪、糖、尿酸などが多いと、たまりやすくなる。
�Bアテロームがたまると、血管の内径が狭くなる(狭窄)だけでなく、血栓(血液のかたまりのようなもの)が形成される。
血管が狭窄したり、血栓によって閉塞すると、その血管から血液の供給を受けている組織の血流が減ったり途絶えたりして、それが長く続くと、組織は酸素不足に陥って死んでしまい (壊死)、働きが失われたり低下したりする。
�Bに至ったものが動脈硬化症ですが、これが脳動脈に起これば一過性脳虚血発作や脳梗塞、冠状動脈に起これば狭心症、心筋梗塞の発症となるわけです。
動脈硬化の恐ろしさは、�@、�Aの段階はまったくの無症状で、�Bに至っても、血流の著しい減少や途絶、そのための組織の障害が生じるまでほとんど自覚症状がない点にあります。
動脈硬化とは、いわば「ひそかに進行する致死的な変化」なのです。
その変化を推し進めているのが高血圧症、高脂血症、糖尿病、高尿酸血症、喫煙、肥満、ストレスなどの危険因子です。
高血圧症は脳出血や心臓病、腎硬化症などを、高尿酸血症は痛風の原因であり、痛風腎や尿路結石などを、また高脂血症は脂肪肝や胆石など、肥満は高血圧症、高脂血症、糖尿病などを合併しやすいことはよく知られており、さらにいずれも動脈硬化を促進する危険因子で、やがては脳梗塞や心筋梗塞といった死亡率の高い成人病の発症に結びついていきます。
成人病の恐ろしさは、このように直接生命にかかわる重大な病気と思えないものでも、複合的にからみ合い、致死的な病気を引き起こすところにあります。
書店をのぞくと、「高血圧症や糖尿病をこわがることはない」というニュアンスで書かれた本が目につきます。
たしかに、高血圧症、糖尿病は血圧、血糖をきちんとコントロールしていれば、こわがる必要のない病気です。
しかし、それはあくまでも「血圧、血糖が良好にコントロールされている」という条件つきなのです。
それを守らずに、高血圧症、糖尿病ぐらいで、すぐには生命を落とすこともあるまい、と油断することがこわいのです。
お気に入りのブックマーク・RSSに登録 »
関連記事
サイトマップカテゴリー:成人病
トラックバック(0)
http://www.loan-me.jp/cgi/mt/mt-tb.cgi/729
